ミニ情報 子どもの「体験格差」が着目されています

「体験格差」とは、聞き慣れない言葉です。旅行や習い事、休日に友だちと一緒に遊ぶことなど、学校の外で行われる体験機会の格差といった意味で使われています。

子どもの成長にとって体験が必要不可欠なことは以前から言われていたことです。子どものころ友人とたくさん遊んだ体験が豊富な人ほど、もっと深く学んでみたいという向上心や他人のためになる仕事をしてみたいといった意識が高いとされてきました。文科省は、2001年に生まれた2万人以上の子どもを18年間追跡した調査データを用いて、体験がその後の成長に及ぼす影響を分析し、その関連性を明らかにしました。調査は、文科省から委託を受けた株式会社浜銀総合研究所が行い、その結果は、2021年3月に報告書「青少年の体験活動の推進に関する調査研究」により公表されました。それによると、小学生の頃に体験活動(自然体験、社会体験、文化的体験)や読書、お手伝いを多くしていた子どもは、その後、高校生の時に自尊感情(自分に対して肯定的、自分に満足している)や外向性(自分のことを活発だと思う)、精神的な回復力(新しいことに興味を持つ、自分の感情を調整する、将来に対して前向き)といった項目の得点が高くなる傾向が見られました。体験しによる良い影響は家庭の経済状況に関係しないことも分かりました。(報告書は≪コチラ≫、概要は≪コチラ≫です。)。

重要なのはここからです。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンは、世帯年収が低い家庭や、ひとり親世帯の子どもは、自然体験や文化的体験の機会が少ないのではないかという問題意識から、全国の2097人の小学生保護者からのアンケート調査をまとめ、2023年7月4日、「子どもの『体験格差』実態調査 最終報告書」を公表しました。それによると、経済的に厳しい家庭の子どもの約3人に1人が学校外の体験機会が何もないこと、物価高騰により特に経済的困難を抱える家庭で子どもの体験機会が減少していること、現在の経済状況が厳しい保護者ほど自身が小学生だった頃の体験機会が少ないことが分かりました。今後の支援制度や社会のあり方を検討する上で重要な指摘です(報告書は≪コチラ≫です。)。近頃の物価高や生活苦により子どもの夏休みはいらないなどの家庭の切実な声が聞こえてきますが、子どもには貴重な夏休みですので、かけがえのない体験を子どもと共有して欲しいものです。それと同時に、子どもの成長にとって貧困の解消、貧富の格差の解消は焦眉の課題といえます。

(出典 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査 最終報告書」19、63、69ページ)