タイ少女の人身取引をどのようにみるか

タイ国籍の12歳の少女が東京都文京区湯島のマッサージ店で働かされ、客への性的行為を強制させられる事件が発生しました。少女は、2025年6月下旬に母親(29)と来日し、店に到着した翌日に母親はいなくなりました。日本語は話せず、店に寝泊まりしながら1ヶ月間で60人もの男性が少女を買いました。経営者の日本人男性(51)は、労働基準法違反、風営法違反の疑いで逮捕されました。母親については、少女を店に引き渡した児童福祉法違反の疑いで警視庁が逮捕状をとって捜査しています。母親は別の性売買に関与したとして台湾で拘束されています。この事件については、人身売買の加害者であるタイ人の母親が悪い、と思われがちですが、そこにとどまらない深刻な問題をはらんでいます。女性や少女の人身売買の実態などに詳しく、人身売買被害者の実態調査の経験もある斎藤百合子・大東文化大学特任教授(国際関係学部)は、次のような指摘をしています(大学のHPは≪コチラ≫です。)。

【母親も被害者か】詳しいことはわかりませんが、事件の背景には国際犯罪組織が関与している可能性が高く、母親は、娘をめぐり誰かに動かされている可能性もあるのでは、といいます。母親は17歳で少女を出産したことになり、母親も児童買春の被害者かもしれません。29歳は業者には“まだ売れる年齢”で、台湾でも母親は性搾取されていた可能性もあります。

【背景に日本の買春容認社会 タイの問題というより日本の性産業の問題だという認識を】齋藤特任教授は、今回の事件に関し、少女を働かせていた日本の性産業や少女を買ってサービスを受けた日本人にこそ問題がある、という認識を持つべきだ、としています。性産業で働く人が低年齢化する傾向に関し、子どもが売られる、買われるのはいけないことだという意識が薄く、日本は子どもを買うことができる特殊な国、と見られていると指摘しました。

【日本の法整備は急務】売春防止法は、不十分なものとはいえ、「売春」も「買春」も禁止とは書いてあります。しかし、罰則については「売る」側は客の勧誘などをすると罰則対象(売春防止法5条)になりうる一方で、「買う」側には罰則の規定、つまりおとがめがないんです。日本社会は「買春」に甘いと思います。「買春」も処罰すべきです。