ショートステイ事業等は、支援を必要とする家庭にはあまり届いていないようです
株式会社日本総合研究所は、2025年3月、「子育て短期支援事業の運営状況及び在り方の検討に関する調査研究」の調査報告書を公表しました。この調査は、こども家庭庁からの助成を受けて実施されました(概要版は≪コチラ≫、全体版は≪コチラ≫です。)。
この調査の背景はどこにあるでしょうか。市区町村が行う事業に「子育て短期支援事業」があります(以下では本事業といいます。)。根拠法は児童福祉法6条の3第3項です。旧要綱は厚労省により2014年に作られましたので、その当時始まった事業です(新要綱は≪コチラ≫、説明は≪コチラ≫です。)。本事業の柱は、短期入所生活援助(ショートステイ)事業と夜間養護等(トワイライトステイ)事業の2つです。前者は子どもを一定期間預かり、後者は子どもを夜間・休日に預かる仕組みです。預かる施設には、児童養護施設・乳児院・保育所・ファミリーホーム・里親等があります。本事業の目的は「保護者の疾病その他の理由により家庭においてこどもを養育することが一時的に困難となった場合等に、児童養護施設等において一定期間、養育・保護を行うことにより、これらのこども及びその家族の福祉の向上を図る。」と書かれています。ところで、2019年度のショートステイ事業は全国で年間約9万件の利用がありましたが、そのうち要支援・要保護児童1人当たりで見ると、年間での利用は約0.36日にとどまりました。さらに、「心中以外の虐待死事例」に当たる47例のうち、本事業を利用したケースは0件でした。こうした実績の低調さからすると、本事業は支援を必要とする家庭に届いていません。そこで、本事業の実態や今後の方向性を調査することにしたものです。
報告書には、本事業拡充に向けた政策提言が述べられています。「事業趣旨を踏まえた利用対象者の見つめなおしの支援」「本事業を実施可能な施設・事業者の拡大」「里親ショートステイの実施における都道府県との連携強化」「里親の登録や育成に向けた支援」等が提案されています。もっとも、本事業が支援を必要とする家庭に届いていないという課題に対応するには、要支援・要保護児童を抱えた家庭を見い出したならば、本事業があることを当該家庭に伝えて積極的な利用を促す方向が具体的であると思われます。そして、そのような家庭を見い出すにあたっては、都道府県や市町村、地域住民らが本事業の存在を念頭において連携し情報交換することが必要であることはいうまでもありません。