わが国の学校の動向と展開。2024年度版の文部科学白書から

文科省は、2025年7月15日、2024年度の文部科学白書を公表しました。いじめ、不登校、高校中途退学、自殺、ヤングケアラーの問題に触れています(白書は≪コチラ≫です。)。

【いじめ】2023年度の全国の学校におけるいじめの認知件数は約73万3000件、いじめの重大事態の件数は1306件でした。いじめの認知件数は、1000人当たりの都道府県間の差が大きく、実態を正確に反映しているとは言い難いと文科省はいいます。このため、文科省は、いじめの認知件数が多い学校について、「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価し、いじめの積極的な認知を徹底するよう促しています。

【不登校】2023年度の全国の小中学校の不登校児童生徒数は約34万6000人、高校は約6万9000人と、極めて憂慮すべき状況です。2024年8月には、学校外の機関で行った学習について、一定の要件の下、学校の判断で不登校児童生徒の成績評価に考慮できるとし、その内容を2024年8月29日付け通知で周知しました。また、不登校児童生徒に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う「学びの多様化学校」は、2025年4月現在、全国で58校開校しています。

【高校中途退学】2023年度の全国の高校における中途退学者数は約4万6000人、在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.5%でした。文科省は2017年度、公立高校における妊娠を理由とした退学の実態把握を行いました。その結果、27年4月~29年3月の2年間に生徒の妊娠の事実を学校が把握した件数(2098件)のうち、妊娠を理由に退学処分を行った事案は認められなかったものの、生徒保護者が通学を希望したのに学校が退学を勧めた事案が32件認められました。これを踏まえ、2018年3月29日付け通知で、生徒に学業継続の意思がある場合は、安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処を行わないという対応も十分考えられるなどの基本的な考えを示しました。

【自殺】2024年の小中高校の児童生徒の自殺者数は529人で過去最多となりました。国は2023年6月「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定し、文科省は同プランに基づき、1人1台端末等を活用した子どもの自殺リスクの早期把握対応に取り組むとともに、SOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育の更なる推進、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実等、児童生徒の自殺予防に向けた取組を進めています。

【ヤングケアラー】文科省はこども家庭庁と連携し、教育委員会や学校の教職員に対するヤングケアラーを理解するための研修の推進や、支援が必要なヤングケアラーを福祉等の外部の支援につなぐ役割を持つスクールソーシャルワーカー等の配置等、必要な施策を推進しています。