ひとり親家庭等の子どもへの学習支援等を広げるには
みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社は、2025年3月、「ひとり親家庭等のこどもへの学習支援の効果的な実施について 報告書」を公表しました。この調査は、こども家庭庁からの助成を受けて実施されました(報告書は≪コチラ≫です。)。
報告書は調査の背景をこう述べます。わが国のひとり親家庭の相対的貧困率は2021年44.5%であり、経済的困難が広がっています。全世帯の子どもの高校卒業後の進学率は83.8%であるのに、ひとり親家庭の子どもの進学率は65.3%で、20ポイント近くの開きがあります。その要因には、ひとり親家庭はふたり親家庭に比べて収入が低く、子どもを学習塾に通わせることができない家庭が多いことや学習環境が整っていないことがあると考えられています。こうした状況を前に、2016年度から「こどもの生活・学習支援事業」が始まりました。これは、放課後児童クラブ等の終了後にひとり親家庭や貧困家庭の子どもに児童館・公民館・民家・子ども食堂などにおいて悩み相談を行いつつ、基本的な生活習慣の習得支援・学習支援・食事の提供等を行う事業です(事業の概要は≪コチラ≫です。)。貧困の連鎖を防止する観点からも重要です。ところが、この事業の実施状況について過去に調査が行われたことはありませんでした。そこで、この度の調査となりました。
調査の結果、「こどもの生活・学習支援事業」の実施自治体の割合は23.0%にとどまり、低調でした。この事業のさらなる普及が今後望まれると提言しています。報告書は次のような課題を挙げます。【ニーズがある子どもを事業の利用につなげる】ニーズのある子どもを「子どもの生活・学習支援事業」につなげなければ意味がありません。たとえば、自治体担当者がひとり親家庭等に接触するタイミングを活用してこの事業を案内する、学校を通じてニーズがあると考えられる子どもに事業案内を行う。【事業内容を拡充する】この事業を必要としている子どもや家庭には多様なニーズがあります。自治体には、これら個別のニーズに対応した柔軟な支援を行うことが求められます。たとえば、送迎を必要とする子ども、障害がある子ども、外国籍の子ども、食物アレルギーがある子どもなどへの個別的な支援を検討することが必要です。2025年度は予算措置が講じられました。【事業の実施体制を強化する】多くの自治体では、人員確保をはじめとした体制構築に課題を有していました。各自治体では、地域の状況に応じて人材の確保、育成に努めています。たとえば、大学の授業内で時間をもらい、事業の説明・チラシ配布を行うことで、多くの大学生を支援員として確保している事例がありました。