こども家庭庁:虐待受けた子どものトラウマケア「体制ある」児相は9%
児童虐待は子どもの心にトラウマを残します。そのため、児童虐待を受けた子どもには必要なケアを行うことが重要です。ところが、児相が、子どものトラウマをどのようにアセスメントし、トラウマケアをどの程度提供できているのか、現状や課題は十分に把握されていません。こども家庭庁は、児相におけるトラウマケアの実施状況や課題を調査することにしました。調査は、株式会社リベルタス・コンサルティングが補助金を受けて、2024年10月~25年1月、全国の児相へのアンケート調査(回答率67.7%)やヒアリング調査などを実施し、その結果が公表されました(報告書は≪コチラ≫です。)。
「貴所では、トラウマケアの充実に取り組んでいくという組織的な理解・合意がありますか?」を尋ねました。「そう思う」「ややそう思う」と回答した児相は66.3%、「そう思わない」「あまりそう思わない」は32.6%でした。
「貴所では、トラウマケアに関する体制、対応方針、児童心理司の育成方針等がありますか?」を尋ねました。「トラウマケアを推進する体制(部署やチーム)がある」が9.3%、「事務分掌で割り当てられるなど、組織内において公式的にトラウマケアを推進する立場の職員の配置がある」が4.1%、「対応方針・ガイドライン・マニュアル等がある」が1.7%でした。
「貴所で、令和5年度に、児童心理司が関与した(面接室や家庭訪問などで面接を実施した)こどものうち、トラウマアセスメント(トラウマの視点からのアセスメント)を行ったこどもの割合はおおよそどの程度ですか?」を質問しました。「~2割程度」が26.2%、「3~4割程度」が17.4%、「5~6割程度」が22.7%、「7~8割程度」が21.5%、「9割程度~」が9.9%でした。
トラブルケアに積極的に取り組んでいる児相へのヒアリング調査も実施しました。その結果、トラウマケアの活動は、①体制整備・連携、②知識・スキルの向上、③トラウマのアセスメントの実施、④トラウマケアの実施、の4過程に分類できました。そして、①~④について、課題や取組例を整理しました。たとえば、①の体制整備・連携の一つとして「児童心理士間の連携」を取り上げ、次のような課題を挙げました。「所属する児童心理司のうち、トラウマケアを実施できる者は一定数に限られる。」「知識・経験を有する中堅以上の児童心理司は業務多忙であり、後進の助言・指導等の時間を確保しにくい。」「異動・退職・離職が多く、組織内に知識や経験が蓄積されにくい。」また、③のトラウマアセスメントの課題として「児童心理司の人員不足、距離的・時間的制約等により、児童心理司が関与できていないこどもがいる。」「幼少期のアセスメントが課題。」「家族アセスメントも課題。」「アセスメントのための時間確保が課題。アセスメント前の心理教育やアセスメント結果の説明等に多大な時間を要する。」などを挙げています。
