こども家庭庁公表:2022年度の児童虐待による死亡事例の検証結果。0歳が最多

こども家庭庁は、2024年9月12日、児童虐待による2022年度の死亡事例65例(72人)及び重症事例43例の検証結果を公表しました。このような虐待死事例の検証は2005年から毎年行われ、今回の公表は第20次報告となります。検証を担当したのは「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」です(報告書全文は≪コチラ≫、概要版は≪コチラ≫、前年の記事は≪コチラ≫です。)。

心中以外の虐待死は54例(56人)、心中による虐待死は11例(16人)にのぼりました。心中以外の虐待死56人の死因となった虐待の類型は、ネグレクト24人、身体的虐待17人でした。主たる加害者は実母23人、実母と実父7人、実父6人でした。養育者の心理的・精神的問題(複数回答あり)としては「養育能力の低さ」15人、「育児不安」11人、「精神障害」10人でした。

心中以外の虐待死の子どもの年齢では、0歳児が25人で44.6%を占めました。中でも、生後24時間に満たないで死亡したと考えられる日齢0日児の死亡事例は9人、日齢1日~月齢1か月未満の死亡事例は6人でした。0歳児とりわけ月齢1か月未満の子どもがおおぜい死亡している従来からの傾向に変化は見られず、依然として深刻な状況が続いています(末尾の表をご参照ください。)。

虐待死の子どもの年齢は、これまでの検証結果を通じて0歳が最多という事態が続いています。また、妊娠期・周産期の問題では、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」「妊婦健康診査未受診」「妊娠届の未提出(母子健康手帳の未交付)」「若年(10代)妊娠」が多くなっています。こうした妊産婦、乳幼児とその保護者にアプローチしているのは市区町村の母子保健担当部門です。ところが、これまでは母子保健担当部門と虐待対応担当部門との連携は不十分でした。しかし、2022年の児童福祉法等の改正により、市区町村は「こども家庭センター」の設置に努めることとされました。これによって、市区町村の母子保健担当部門と虐待対応担当部門の連携・協働が図られることとなりました。このような「こども家庭センター」の活動により幼少期の子どもの虐待死が減少することが期待されています(関連記事は≪コチラ≫です。)。

(出典 専門委員会「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について」150ページ)
※ 日本子ども虐待防止学会JaSPCAN第19回学術集会・信州大会が長野県松本の地で開催されたのは2013年12月のことでした。私たちの会も、中心団体の一つとして積極的に準備にあたりました。信州大会で取り上げられた大会テーマは虐待死の問題でした。大会宣言では、虐待死の事例が高水準にあり一向に減少しないことや対策が掛け声だけで終始している現状を踏まえ、「虐待死ゼロ」に向けた実効性ある年次計画を策定し実行することなどを訴えました(大会宣言は≪コチラ≫です。)。その信州大会から11年が経とうとしていますが、未だにわが国の虐待死の状況には明るい兆しが見られません。