こども家庭庁は、児童相談所運営指針を一部改訂しました

こども家庭庁は、2025年3月31日、児童相談所運営指針を一部改訂して関係自治体に通知しました。運営指針は、児相の運営の基本的な方針を示す文書で、各児相はこの指針にしたがって手続を進めますので重要です。これまでは厚労省が作成を担ってきましたが、こども家庭庁発足後は同庁が作成を引き継ぎました。改訂履歴をみますと、指針はこのところ毎年改訂されています(新旧対照表は≪コチラ≫、改訂後の児童相談所運営指針は≪コチラ≫、です。)。変更事項のうち、児童虐待に関連する2点を取りあげます。以下の「 」は原文からの引用です。

1点目として「一時保護中又は施設入所等の措置中における保護者との面会・通信の基本的な考え方」が新設されました。子どもの安全・安心を守ろうとすると制限に傾きがちですが、「家族とのつながりを断ち切ることがないよう、親子関係の修復や再構築の観点も踏まえて対応する必要がある。」といえます。方法として、「対面だけでなく、手紙や電話、テレビ電話等のオンラインツール等を用いて段階的かつ柔軟に対応するなど、こどもや家族の状況を踏まえ、工夫した対応が求められる。」とします。子どもが「もし面会・通信に前向きになれない場合は面会・通信を拒否してもよいことを伝え、拒否することによる保護者の反応を不安に思っているこどもには安心感をもたらすケアが必要である。」「正当な理由がありやむを得ず児童相談所として面会・通信を制限する場合には、こどもにその理由を十分に説明し理解を得るよう努めるとともに、あわせて保護者にも説明する。」等の考え方の基本が示されました。

2点目は、児童虐待による死亡事例等の検証の記載が第10章として新設されたことです。児童虐待防止法4条5項により、児童虐待を受けた子どもが心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析が自治体の責務とされました。その検証は都道府県・指定都市・児相設置市が実施しますが、市町村、児相なども独自に検証を行うことが望ましいとされています。そのため、検証の実施主体にかかわらず検証の基本的な進め方が記載されました。末尾には特徴的なケースが挙げられています。きょうだいへの虐待歴のある家庭の事例、DVが背景にある事例、転居を繰り返し複数の地方自治体が関与していた事例、心中事例の4類型です。