こども家庭庁は、こども若者シェルターのガイドラインを発しました

こども家庭庁は、2025年3月27日、「こども若者シェルター・相談支援事業に関するガイドライン」を発しました(ガイドラインは≪コチラ≫です。)。「こども若者シェルター・相談支援事業」とは何か、ガイドライン3ページから引用します。「本事業は、虐待等の様々な事情により家庭等に居場所がない、10代からおおむね20代までの本事業のシェルターの利用を希望するこども・若者が、そのニーズにあわせて必要な支援を受けられ、宿泊もできる安全な居場所を提供するもの」。こうした民間のシェルター活動に補助が支給されるに至った経緯は≪コチラ≫をご参照ください。

重要な点は親権との関係です。シェルターへの入所は、子ども・若者とシェルター運営者の間の利用契約によって成立します。ところで、未成年者は単独では契約を結ぶことができず、親の同意を得なければなりません(民法5条)。もしも親の同意なくして契約を結んだ場合、親はその契約を取消すことができます(民法120条)。そうすると、虐待や親子関係から避難してきた子ども・若者が適法にシェルターに入所するには親の同意を必要とすることになります。しかしその原則を貫くと、入所が必要な子ども・若者はシェルターを利用できなくなり、これでは本来の役割を果たせません。そこで、親の同意なく締結された利用契約であっても親が取消すまでは有効なので、事前に親からの同意が得られないと見込まれる場合であっても、未成年者本人との利用契約でシェルターの入所が可能との考え方を基本としました。しかし、親が利用契約を取消し、子どもの引渡しを求めてくる可能性があります。そういう場合、家庭内での虐待等の状況からみてシェルターの継続利用が必要と考えられるときは、児相と相談の上で一時保護委託として受入れを継続する方向を示しました。

ガイドラインは、物品やお金の貸し借り、シェルターの所在地や知人の来訪の扱い、外出や外泊、所持品の預かり、シェルター内外のトラブルへの対応などのルールをあらかじめ定めるよう求めています。スマホの持込み・利用についてもルール化を求めています。スマホは、子ども・若者にとって利用ニーズが高く心理的に大切なツールなので、持込みを制限するとシェルターの利用を妨げる恐れがあります。そこで、スマホの自由な利用を原則としつつ、制限が必要であるとしても依存的な利用を改善するために深夜利用を制限するなど必要最小限にとどめることが考えられるとしました。

シェルターでは、宿泊を含む居場所の提供や相談支援のほか、就労や就学のサポートなどを実施します。退所後の支援に関しては、定期的な支援物資の送付や訪問面談、SNSでの連絡や食事会等のイベントを通じた元利用者のコミュニティ形成を例示しました。