こども家庭庁は、こども若者シェルターに関するガイドライン案をまとめました。親の同意がなくても利用可能に
児童虐待や親子関係に悩んで家を出て居場所を失った子ども・若者が、東京・歌舞伎町の通称「トー横」のような繁華街等に集まり、犯罪に巻き込まれ、あるいは危険な環境で過ごす事態が起きています。このような10代~20代の子ども・若者に、安全な環境を確保することが差しせまった重要な課題でした。こうした事態を見かねた福祉・司法関係者らは2004年ころから、運営資金を自前で調達して、宿泊可能な民間シェルターを各地で開所して運営してきました。しかし、資金にゆとりがないため十分に活動できない施設もあります。そこで、こども家庭庁は2024年度、これらの民間シェルターの取組を重視し、新たな予算事業として「こども若者シェルター・相談支援事業」を創設して補助を始めました(関連記事は≪コチラ≫です。)。さらに、こども家庭庁は、2024年12月20日、こども若者シェルターに携わる自治体や運営者の拠り所となるガイドライン案をまとめました。ガイドラインは今年度中に決定する予定です(「こども若者シェルター・相談支援事業に関するガイドライン(案)」は≪コチラ≫です。)。
ガイドライン案では、事前に親権者から同意を得ることが困難と見込まれる場合であっても、シェルターの利用が可能との考え方を基本としています。親権者がシェルターの利用を拒んだり、子どもの引き渡しを求めたりしても、虐待などの疑いがあるケースで家庭の状況等からシェルターの継続利用が必要と認められるときは、児相と相談した上で一時保護委託として受け入れを継続する方向を示しています。
入所生活上のルールとして課題となったのは、スマホの持ち込み、利用を認めることの当否でした。一方で、その持ち込みを認めると外部通信が自由となり弊害が考えられます。他方で、子ども・若者にとってスマホは利用ニーズが高く心理的に大切なツールなので、これを取上げることはシェルターへの接近を妨げる恐れがあると考えられます。ガイドライン案は、「親権者等による追跡やSNS等を通じて犯罪に巻き込まれる恐れが現に迫っている、生活に支障が及ぶ依存的な利用が改善されないといった状況がない限りは、自由な利用が可能となるように、こども・若者の意見を十分踏まえて対応を検討することが望ましい。」としています。スマホ利用を含めて、シェルターの所在や知人の来訪に関すること、外出や外泊、所持品の預かり、シェルター内外のトラブルへの対応その他についてもあらかじめルールを定めるよう求めています。シェルターでは、居場所の提供や相談支援のほか、就労や就学のサポートなどを実施します。退所後の支援に関しては、定期的な支援物資の送付や訪問面談、SNSでの連絡や食事会等のイベントを通じた元利用者のコミュニティ形成を例示しています。