こども家庭庁の専門委員会:米国では、心中は子殺し自殺。専門委員会は名称見直しを提言へ
こども家庭庁の専門委員会(児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会)は、児童虐待による子どもの死亡事例を検証し、再発防止策を提言する目的で毎年報告書(こども虐待による死亡事例等の検証結果等について)をまとめています。通算で第21次の報告となる2023年度の検証結果は、2025年9月11日に公表されました。報告書によると、2023年度に発生した児童虐待によって死亡した子どもは全国で65人、このうち「心中以外の虐待死」が48人、「心中による虐待死」が17人でした。ここで心中には、子どもは死亡し親は生存した事例を含んでいます(報告書は≪コチラ≫、関連記事は≪コチラ≫です。)。
今回の第21次報告は、「心中事例とその背景」という特集を組み、50ページあまりの紙面を割いています。過去の第5次から第20次報告までの死亡事例を分析すると、心中以外は853人、心中は532人であり、4割近くが心中死で占められていました。ところが、現在でも社会全体としては、親子心中を児童虐待であると認識しているとは言い切れない、といいます。しかしながら、心中による虐待死は、何よりも、保護者によって何らの罪もない子どもが殺害されるものであり、深刻な児童虐待の一つであることを忘れてはなりません。委員会は、特集の目的を「社会全体に対して心中は虐待であるという認識や、こどもは保護者の所有物ではなく、権利の主体であるという認識の周知・啓発となることを目指した」と説明しています。
心中について、米国、オーストラリア等では「filicide-suicide」、韓国では「자녀 살해 후극단적 선택」といい、こども家庭庁虐待防止対策課は、前者を「子殺し自殺」、後者を「こども殺害後の極端な選択(極端な選択=自殺)」と邦訳しています。また、横浜市では、「加害者自死と一体化したこどもの殺害」などと表現し、殺害と自死を明示的に示す試みが行われているそうです。委員会は、心中が虐待であることの理解をより一層深め、心中事例を防止していくためには、心中という名称の見直しについても慎重に検討を行う必要がある、としています。その上で、国は改めて、社会全体に対して心中は虐待であるという認識や、子どもは保護者の所有物ではなく、権利の主体であるという認識を持つことができるよう、周知・啓発を推進していくことも重要である、と提言しています。
分析によると、心中事例で死亡した子どもの年齢は6歳以上が半数(50.9%)を占めており、0歳児が半数近くにのぼる「心中以外の虐待死」とは異なる傾向を示しています。
