「法定養育費制度」が2026年5月までに始まります。ひとり親家庭の支えに、でも月額2万円では

夫婦の婚姻(結婚)や離婚、親子間の関係などは民法という法律で定められています。離婚した夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、子どもを育てている親は他方の親に対して養育費を請求することができます。ところが、これまでの民法の制度では、養育費は父母間での話合や家庭裁判所の手続によって金額を取り決めなければなりませんでした。そのため、実際には、父母間で話合をしたり、裁判所に訴えたりすることがネックとなって、養育費を受け取れないケースがたくさんありました。また、離婚の際に養育費の取り決めをしても、支払われないケースが多いという現状がありました。しかしながら、ひとり親家庭の貧困率は高く、子どもはその最大の被害者でした。また、離婚した後であっても父母が子どもの養育にかかわり、双方が親としての責任を果たすことが子どもの利益の観点から必要です。

こうした理由から、2024年5月の民法改正により、「法定養育費制度」が導入されました。これは、離婚の際に養育費の取り決めをしていなくても、法律に基づいた一定額の養育費を相手方に請求できるという制度です(民法766条の3)。

法定養育費制度が導入されたことによって、相手方が話合に応じない場合であっても、簡単に養育費を請求できるようになります。また、離婚時に遡って請求することができる点も特徴です。請求のタイミングが遅れても、支払いを受ける側の不利益はほとんどありません。さらに、この法定養育費には、先取特権という権利が認められ、相手方が支払いを拒んでも、相手方の賃金や預金などの財産から優先的かつ強制的に支払いを受けられます(民法306条3号)。ただ、法定養育費は最低限の制度にすぎません。子どもの日常生活や成長を支えるため、法定養育費の金額に甘んじることなく、父母の話合や裁判所の手続を通じて、各家庭の実情に即した適切な養育費の金額を決め、それを請求することを怠らないことが大切です。

ところで、この金額は、法務省が省令で決めることになっています。法務省は、子ども1人あたり月額2万円とする案を2025年8月に公表しました。2万円については、一歩前進と評価する声が見られる反面、月2万円では全く足りないという否定的な声もあがっています。法務省は9月4日から1か月間、パブリックコメントを行い、寄せられた意見も踏まえて省令を定めることにしています。改正民法は、2026年5月までの間に施行されることになっています。なお、改正法の施行後に離婚した人が対象となるため、施行前に離婚した人が法定養育費を請求することはできません。